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年末のリフレクション・リチュアル――国際的に活躍する女性リーダーのために

夕暮れの空港ロビーで、ビジネススーツを着た中年の女性がノートに書き込み、横にノートパソコンがあり、窓の外に旅客機が見えている様子。年末のリフレクションと「内なるコンパス」のイメージを表現している。

次の“大きな一歩”の前に、あなたの「内なるコンパス」を整える時間を


国や文化の境界をまたいで走り、リードしていると、年末は「穏やかな一年間の終結」というより、「またひとつゴールに向かって全力疾走する」ように感じられることが多いものです。


取締役会や予算承認の会議、子どもの学校行事、長距離フライト、そして2つ以上の国にまたがる家族からの期待。12月24日にようやくパソコンを閉じたと思ったら、新年の花火の余韻が冷めないうちに、また画面を開いている――。


もしこれがあなたの現実なら、決してあなただけではありません。


グローバルに活躍する女性リーダーは、しばしば常に「次へ、次へ」と進み続けています。


●      次のポジション、次のマーケット、次の駐在先

●      子どもの次の学校・次の学年

●      「みんなにとってちょうどよい」次の人生の章


けれども、持続可能なリーダーシップと、満たされた国際生活に必要なのは、勢いだけではありません。

そこには意図的な「小さな一時停止」が欠かせません。


年末のリフレクション・リチュアルは、その「小さな一時停止」の時間です。

それはあなたに、次のことをもたらします。


●      自分のストーリーを「反応的」なものから「意図的」なものへと取り戻す

●      リーダー、母、パートナー、娘、駐在者、帰国者、「どちらでもない自分」…こうした複数のアイデンティティを統合する

●      目に見える成果だけでなく、「絶えず移行し続けること」の感情的な負荷をもきちんと尊重する

●      外からの期待だけでなく、自分の内なるコンパスを軸に新しい年を迎える


私自身、フランス、日本、北米を行き来するなかで、このステップを飛ばしてしまった年が何度もありました。プロジェクトからプロジェクトへ、国から国へ、人生の章から次の章へと飛び移り続けていたのです。


振り返ると、いちばん「地に足がついている」と感じ、自分への信頼が深まっていたのは、「何を成し遂げたか」だけでなく、「どんな自分になりつつあるのか」を意図的に振り返る時間をとった年でした。


ここでは、国際社会で活躍する女性リーダーであるあなたが、ご自身の現実に合わせて取り入れられる「シンプルで柔軟なリチュアル」をいくつかご紹介します。


全部をやる必要はありません。「今の自分にしっくりくるものを1つか2つ選んで、自分のものとして育てていく」――そのくらいの気軽さで読んでいただければ嬉しいです。


リチュアル①:「ラウンジでひとり年次振り返り」


国際的に飛び回る多くのエグゼクティブにとって、12月は「移動の月」でもあります。その空港のラウンジや新幹線・長距離列車での時間を「ただの待ち時間」としてやり過ごす代わりに、静かなリフレクションの時間として活かしてみませんか。


やり方:


12月の移動のうち、どれかひとつを選びます。フライト、新幹線、TGV、長距離列車など――。


そして、その移動時間を「今年1年のトランジット振り返りタイム」にすると決めます。


その道中で、静かに次の質問を自分に投げかけてみてください。


1. 今年、私は何を『築いて』きたか?


プロジェクト、チーム、パートナーシップ、新しい市場、新しいスキル、あるいは内面的なレジリエンスや勇気など、あなたがこの1年で育ててきたものを思い出してみましょう。


2. 今年、私は何を『守って』きたか?


大切にしている価値観、境界線、人間関係、健康、エネルギー…。ほんのささいな行動であっても、「ここだけは手放さない」と意識して守ってきたものは何でしょうか。


3. 今年、私は何から『卒業』したか?


これからの自分にはもう合わない役割、物語、習慣、人間関係のパターンに気づいてみましょう。


これは「評価面談」ではありません。あくまで、自分への思いやりに満ちた棚卸しです。


私がパリと東京を行き来するなかでこの実践を始めたとき、自分の内面的な変化を、いかに過小評価していたかに気づきました。


たとえば、はじめて無理な要求に「ノー」と言えた瞬間。期待値を勇気を持って再交渉した場面。以前なら黙っていたであろう会議で、自信を持って発言した場面――。


こうした「小さな内なる変化」を、私はそれまでほとんど意識してこなかったのです。

気づきを記録する方法は、あなたにとって自然な形で構いません。


●      ノートに1ページ書き出す

●      スマートフォンのメモアプリに打ち込む

●      自分宛てに「Year in Transit – 2025」のような件名でメールを書く


こうして毎年続けていくと、あなたのリーダーシップ・ジャーニーの「非公開アーカイブ」が少しずつ積み上がっていきます。


迷いや不安がまた顔を出したとき、そこに立ち返ることができる、心強い資源になります。


リチュアル②:「3つの世界」でこの1年をマッピングする


グローバルに生きる女性たちは、しばしば同時にいくつもの世界のなかで生きています。



●      役割・市場・成果が中心となる 「外の世界」

●      チーム・ネットワーク・家族とのつながりから成る 「関係性の世界」

●      価値観・アイデンティティ・静かな願いが息づく 「内なる世界」

今年1年、一度も国外に出なかったとしても、あなたはこの3つの世界を行き来してきたはずです。


私はこのワークを「3つの大陸マッピング」と呼んでいます。

1枚の紙を用意して、3つのゾーンに区切ってみましょう。


1. 外のマップ ― マーケットと役割


この1年、あなたはどこで仕事をしてきましたか?(国・地域・市場・事業領域 など)

また、どのような役割を担ってきたでしょうか?公式な肩書きだけでなく、非公式な役割も含めて書き出してみます。

●      エグゼクティブ、マネジャー、取締役・ボードメンバー

●      メンター、橋渡し役、文化の「通訳者」

●      名刺にはないけれど、実質的な「火消し役」や「危機管理担当」 など


2. 関係性のマップ ― ネットワークと帰属感


この1年、あなたにとってのキーパーソンは誰だったでしょうか。

●      支えてくれた同僚、スポンサー、上司、ステークホルダー

●      本音で話せる「思考のパートナー」


どのコミュニティにいるとき、あなたは「よく見てもらえている」「価値を認めてもらえている」と感じましたか?


逆に、どの場では「招かれたゲスト」のように感じたり、「多様性の象徴」としてだけそこにいるように感じたり、常に評価されているような緊張感がありましたか?


3. 内なるコンパス ― 価値観とアイデンティティ


この1年、あなたの意思決定をいちばん強く導いていた価値観は何でしょうか。

(例:誠実さ、家族、成長、自由、貢献、創造性 など)


どんな場面で、「自分らしさと行動がしっかり一致していた」と感じましたか?



一方で、「物事を前に進めるためには仕方ない」と思いながらも、大切な何かを犠牲にしたり、自分の一部を押し殺すような感覚があった場面はどこでしょうか。

この3つのマップを並べて眺めてみると、あなたのこの1年の「本当の物語」が、よりくっきりと立ち上がってきます。


たとえば――数字の上では十分に「成功」しているマーケットなのに、実はもう自分をまったく満たしていないと気づくかもしれません。


あるいは、いちばん大きな成長は「昇進」そのものではなく、キャリアと家庭生活が絶えず衝突し続ける状況から抜け出すために、境界線を静かに引き直したことにあった――そんな発見があるかもしれません。


国境を超える女性リーダーのコーチ&コンサルタントとして、クライアントのみなさまと関わるなかで、よくこんな気づきの瞬間に立ち会います。


「だからこんなに疲れていたんですね。外側のマップと、内なるコンパスが、ずっと別の方向を向いていたんだ……。」


ここで生まれる「明確さ」は、自分を責めるためのものではありません。


むしろ、あなたの進んできた軌跡を理解し、これからの一歩をより意図的に選び取るためのものです。


リチュアル③:クロスカルチャー感謝リスト


「感謝しましょう」という言葉は、ときにありきたりに聞こえるかもしれません。


ですが、国や文化をまたいでリードする立場の女性にとって、感謝には独特のニュアンスがあります。


感謝やねぎらいの表現は、文化によって大きく異なります。


●      控えめで、あえて多くを語らない「ありがとう」

●      オープンで感情豊かな、ストレートな称賛

●      言葉にはあまり出さないけれど、長期的な忠誠心で示される感謝


年末には、ぜひ次のような**「クロスカルチャー感謝リスト」**を試してみてください。


1.  あなたの「3つの世界」それぞれで、この1年、本当に支えになってくれた人を3人ずつ思い浮かべてみます。


●      「ホーム/家族」の世界(母国、あるいは心が帰る場所)

●      今暮らし、働いている「現地/仕事」の世界

●      そのどちらでもない「第3のスペース」(国際的なネットワーク、オンラインコミュニティ、海外のメンターなど)


2.  それぞれの人について、次のように書き出してみます。


●      その人は、この1年、あなたに何を与えてくれましたか?(目に見える形でも、見えない形でも)

●      その人と一緒にいるとき、あなたはどんな気持ちになりますか?

●      時間や文化の制約がなかったとしたら、本当はその人にどんな言葉をかけたいですか?


3.  そのうえで、リストの中から少なくとも3人を選び、実際に「ありがとう」を伝えてみましょう。


●      短いメッセージ

●      ボイスメッセージ

●      手書きのカード

●      心を込めたLinkedInメッセージ など


不思議なことに、そうしたメッセージは、相手にとって「ちょうど必要なタイミング」で届くことがとても多いのです。


同時に、それはあなた自身にとっても、「この国際的な人生を、一人で背負っているわけではない」という静かな安心の感覚を取り戻すきっかけになります。


リチュアル④:手放しとリニューアル


野心的な女性たちは、新しい目標を掲げることにはとても長けています。


新しいポジション。新しい数値目標。新しい国や都市での生活。


けれど、「次」に向かって走り出す前に、もっと静かで、けれど本質的なステップがあります。


それは、「新しい年にまで持ち込まなくてよいもの」を自分で決めることです。


このワークは、こんな場所でやってみるのもおすすめです。


●      自宅で、温かいお茶を片手に

●      誰も自分を知らない、少し離れたカフェで

●      出張の合間、ホテルの部屋で


紙を2枚用意し、1枚目の上部にこう書きます。


「今年、私はこれを手放すことを選ぶ」


そこに、浮かんでくることをできるだけ検閲せずに書き出していきます。


●      もはや自分が担う必要のない役割

●      「グローバルに生きる女性は、○○を持つことはできない」という物語(年齢のこと、移動が多いこと、目立ちすぎる/異質すぎる/ローカルすぎる など)

●      心の中に残っている「残り香」――怒り、悔しさ、自責の念、失望感 など


次に、2枚目の紙にこう書きます。


「来年も、私はこれを持っていくことを選ぶ」


ここには、たとえばこんなことを書いてみてください。


●      新しく身につけたスキル、新しい勇気、新しく引いた境界線

●      異文化をまたいでリードする自分のスタイルについての、より深い理解

●      自分のウェルビーイングを「戦略的資産」として扱うという新たなコミットメント(あと回しの「ご褒美」ではなく)


1枚目の「手放すリスト」を、ビリビリと破いたり、安全な形で象徴的に燃やしたりする方もいます。


一方、「持っていくリスト」は、来年の手帳やノートに挟んでおく――そんな方も多いです。


やってみると、とてもシンプルなリチュアルです。ですが、そこで生まれる「内側からの許可」、つまり「もう十分頑張ったものをそっと降ろす」許可と、「本当に大切なものを守り抜く」決意は、想像以上に深い変化をもたらします。


リチュアル⑤:3年後の「未来の自分」と対話する


年末は、ひとつの「境目」のような時期です。


片足は、終わろうとしているこの一年に。もう片足は、これから始まる新しい一年に。


だからこそ、今のあなたより少し先を歩いている**「未来の自分」**の声を招き入れるのに、ぴったりのタイミングでもあります。


次の、短いライティング・エクササイズを試してみてください。


3年後の自分を想像してみましょう。


その彼女は、今よりもしっくりくる役割と場所、そして自分らしいリズムで暮らしています。


いまもグローバルに生きてはいるけれど、「選択」と「心の平穏」が、今よりもう少し増えています。


その未来の場所から、あなたの未来の自分に、次の問いに答えてもらいます。


●      私は、何をようやく「望んでもいい」と自分に許したのだろう?

●      私は、何についてもう謝らなくなったのだろう?

●      私の人生の軌道を変えた『勇気ある決断』は、何だったのだろう?


それから、その未来の自分に、いまのあなた宛ての短い手紙を書いてもらうイメージで自由に書き出してみてください。


上手く書こうとしなくて大丈夫です。推敲も不要です。


ただ、出てきた言葉を、そのまま受け止めてあげてください。


驚くほど多くの場合、あなたのいちばん深い答えは、すでに心のどこかにあります。


このエクササイズは、その声が、安心して表に出てこられる「スペース」をあなたの中につくってあげるためのものなのです。


すべてをつなげていく


これらのリチュアルを実践するのに、1週間のリトリートも、完璧に静かな家も必要ありません。


いまの生活の中に、無理のない形で織り込むことができます。


●      フライトの合間に、ラウンジでの30分

●      いつもより少しだけ早起きした朝の、手帳とコーヒーだけの時間

●      「よく知っているけれど、もう完全な『ホーム』とは言えない」そんな街を散歩しながらの、ひとり時間


年末のリフレクションは、自分を裁くためのものでも、「また新しい基準」を課すためのものでもありません。


そうではなく、次のための時間です。


●      あなたの国際的な人生の複雑さを、そのまま尊重すること

●      この1年を通じて経験してきたことを、感情面・仕事面・文化面のすべてから統合し直すこと

●      そのうえで、これからの次の一歩の方向性を、意識的に選び取ること


Global Compass(グローバル・コンパス)では、私はまさにこのようなスペースを、国際的に活躍する女性リーダーの皆さまのために提供しています。


あなたの**内なるコンパス(Inner Compass)と、現実のキャリアや生活という外側の地図(Outer Map)**を、

●      明瞭さ(Clarity)

●      思いやり(Compassion)

●      戦略性(Strategy)


この3つをもって一緒に見つめ、これまでの旅路の複雑さも豊かさも、「ややこしすぎる」ものとしてではなく、あなたという一人の女性リーダーの物語として、まるごと歓迎する場です。


この一年を締めくくるにあたり、ぜひ試してみてください。

 

●      ここで紹介したリチュアルの中から、1つ選ぶ

●      実際にやってみる、という小さな贈り物を自分にしてあげる

●      そのあと、自分の内側がどう変化しているかに、静かに気づいてみる


もしかしたら、少しだけ穏やかに、少しだけクリアに、そしてどこか静かな自信が芽生えているかもしれません。


12月に、人生のすべてを「総入れ替え」する必要はありません。


この一年を、国境を越え、文化を越え、さまざまな期待を引き受けながら歩いてきたひとりの女性としての自分に、「よくやってきたね」とそっと敬意を向けること。


まずはそれだけで十分です。


その地点から踏み出す次の一歩は、もはや「反射的なリアクション」ではなくなります。


それは、あなたがなりつつあるリーダーへと向かう、意識的で、地に足のついた一歩となっていきます。


 
 
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